ーーーー講義録始めーーーー
ノールズは、この学習プロセスに基づいて、事前に学習者と指導者や仲間との間で、学習の目標、学習資源と方法、目標達成のための評価などを明記した「学習契約」を書面化し、学習実施の際にその契約内容を随時検討することを提案しています。「学習契約」という考え方はアメリカ的な発想のように感じますが、いかがでしょうか。
はい、その通りです。ノールズがアメリカ人であることも影響しているのでしょう。「学習契約」は日本ではあまり一般的ではありませんね。アメリカでは、日本よりも個人主義が強いため、このような契約の概念が取り入れられています。アメリカでは、大学の遠隔教育や医師などの専門職の研修で、学習契約が活用されています。
学習契約では、学習者と教授や研修ディレクターとの間で学習契約書が交わされます。学習契約書には、学習の目的、学習資源や方法、学習成果の評価方法、技術習得の目標などが含まれ、学習者がこれらの項目に記入し、それを教授や研修ディレクターが承認します。学習の進捗に応じて、契約内容が途中で修正されることもあります。私の経験では、最近、私が勤務している大学の大学院で、院生が修士課程の1年次から「年次研究計画書」を提出することが義務付けられています。
そうですか。具体的にはどのような内容なのですか?
はい。例えば、修士課程の1年次では、何年何月までに研究テーマに関する先行研究を収集し、何月までにフィールドワークに行き、誰にインタビューをするかを決めます。また、必要に応じてアンケートも実施し、その結果を基に中間発表を行います。このように、院生は自立性と自己管理に基づいて学習や研究を進めています。私たち教員は、その計画をもとに指導を行うことができるようになっています。
なるほど。赤尾先生の大学院では、学習契約のような仕組みが導入されているのですね。自己決定学習では、学習目標とプロセスの中で、学習者の自立性と自己管理が求められます。学習契約は、まさにその自立性と自己管理を促進する方法の一つと言えるでしょう。
