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労働時間の法規制の基本ルール #放送大学講義録(雇用社会と法第6回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

法定労働時間の原則

労働時間の基本ルールを確認しましょう。
まずは法定労働時間です。1日8時間、週40時間というのが、労働基準法が定める法定労働時間の上限になります。

労働基準法第32条第1項は次のように定めています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き、1週間について40時間を超えて労働させてはならない。

さらに第2項では、

使用者は、1週間の各日においては、労働者に、休憩時間を除き、1日について8時間を超えて労働させてはならない。

このように、条文はいずれも「させてはならない」と定めており、1日8時間・週40時間が原則的上限とされています。
ただし、後に述べるように、**時間外労働を行うための手続(いわゆる36協定の締結・届出)**を経れば、一定範囲で法定労働時間を超えることが認められます。

なお、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業については、例外的に週44時間・1日8時間とされています。これを規定しているのが労働基準法第40条第1項および施行規則第25条の2です。


休憩・休日の規定

休憩時間については、労働基準法第34条第1項が定めています。

使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければならない。

また第2項では、「一斉付与の原則」を定め、原則としてすべての労働者に同時に休憩を与えることとしています。ただし、業務の性質上これが難しい場合には、労働基準監督署長の許可を得て一斉付与の例外が認められます。

さらに第3項では、休憩時間の利用の自由が規定されており、休憩時間の使い方は労働者本人の自由に委ねられています。

休日については、労働基準法第35条第1項・第2項により、

使用者は、労働者に対して、少なくとも1週間に1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない。

と定められています。
今日では週休2日制が広く普及していますが、これは企業の就業規則や労使協定によって自主的に運用されているものであり、労働基準法自体が直接定めているわけではありません。法律上は、1週1日または4週4日以上の休日が「法定休日」とされます。


労働時間規制の適用除外

労働時間規制の適用が除外される場合もあります。それが労働基準法第41条で規定される3類型です。

  1. 農業・畜産・水産業に従事する労働者
     自然条件に左右される産業であり、労働時間の画一的規制になじまないことから除外されています。

  2. 管理監督者および機密事務取扱者
     管理監督者とは、次の3つの勤務実態を満たしている者を指します。
     ① 労務管理や人事権限など、使用者と一体的な立場にあること。
     ② 自らの裁量で出退勤時刻を決定できること。
     ③ 割増賃金の代替として、相応の役職手当や管理職手当が支給されていること。

 単に「課長」「主任」といった肩書を持つだけでは管理監督者に該当しません。企業経営に関与するほどの権限を有している場合に限られます。
 一方、機密事務取扱者とは、経営に関する重要情報を扱う秘書や経営補佐的職務の従事者などが典型です。

  1. 監視・断続的労働に従事する者
     例として、ビル警備員や守衛などが該当します。監視的・断続的な業務であり、労働密度が低いことから除外の対象となります。ただし、この扱いを受けるには、所轄労働基準監督署長の許可が必要です。