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女子高生の制服文化とサブカルチャー(教育文化の社会学第7回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

戦前の女学生文化と異なり、現代の女子生徒サブカルチャーはさらに多様化しています。その代表例が制服の着こなしや意味付けの変化です。1970年代までは制服は無個性で画一的な服装と見なされ、生徒を管理する象徴とされていました。そのため、校内紛争の中で制服廃止を求める運動も見られました。

ところが、1980年代後半になると、制服は管理の象徴ではなくファッションとして楽しむ文化が生まれます。東京都内の女子高生の制服を観察し151校分のイラストを作成した森伸之氏は、1987年頃から女子高生の制服の着こなしが多様化していることを指摘しています。制服の規則を守りつつも、ギリギリの範囲で工夫して楽しむ姿勢が広がり、スカートの長さを短くしたり、ルーズソックスを履いたりするなど、制服ファッションが進化しました。

このような着こなしは、グループのアイデンティティを示すだけでなく、自分たちのスタイルを表現し、自分らしさをアピールする手段ともなりました。制服はもはや管理の象徴ではなく、生徒が楽しむもの、自分の個性を演出するものに変化しました。また、学校ブランドのイメージとも関連し、細部の違いや着こなしの多様性を通じて反抗ではなく自己表現の一環として活用されています。

教育社会学者の宮崎あゆみ氏は、1990年代に行った女子高でのフィールドワークを通じて、1つの学校内でもいくつかの生徒サブカルチャーが存在することを明らかにしています。「勉強グループ」「オタッキーグループ」「ヤンキーグループ」「一般グループ」の4つのタイプが抽出され、それぞれのグループが制服の着こなしや髪型、化粧、アクセサリーの使い方などで特徴を示しています。

こうした違いは単に外見的な特徴だけではなく、各グループの女性性やセクシャリティに対する態度、学校外での行動範囲や趣味などの違いが反映されています。それぞれが互いを意識し、自分たちの存在をアピールする手段としての意味を持っています。

これらの事例から、ジェンダーサブカルチャーは一枚岩ではなく、多様なタイプやスタイルが存在し、学校文化と連続したり対立したりするだけでなく、より多様な意味や価値観を持つものだと言えます。