ーーーー講義録始めーーーー
高校生文化の多様性と変遷:進学校と非進学校、生徒サブカルチャーの視点
生徒文化、あるいは高校生文化といっても、高校生全体に共通する文化があるわけではなく、さまざまなタイプが存在します。この多様性について、以下に考察を進めます。
戦前から戦後への変化
大正期の旧制高校では、教養主義文化が共通の学生文化として存在していました。しかし、戦後、高校進学率が向上し、1970年代には90%を超えたことで、同年齢の大多数が高校生として過ごすようになりました。この時期になると、高校生文化を一括りにはできない多様な生徒文化が現れてきます。
高校生文化のタイプ
高校のタイプによって、生徒文化に大きな違いが見られるようになります。
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進学校の生徒文化
- 進学志向が強く、勉強や読書、趣味を中心とした文化が形成されます。
- 学校の規範文化とは一定の距離を保ちながらも、対立するものではなく、補完的・連続的な関係を持つことが多いです。
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非進学校の生徒文化
- 外での遊びや逸脱的な行動を共有する文化が形成されることがあります。
- 学校の期待や規範に反発し、学校外での活動を重視する傾向があります。
このような文化の違いは、生徒自身が自律的に形成するというよりも、進学校と非進学校という選抜の文脈に伴って生まれる文脈効果として捉えられます。
学校格差構造との関連
1970年代の生徒文化研究では、学校タイプに応じた生徒文化が、学校の中心的な文化と対応することで、学校間の格差構造を補強する機能を果たしていると指摘されてきました。進学校では進学志向が強調され、非進学校では学校の枠組みから外れた文化が形成されることで、学校間の差異がさらに強調されていったのです。
反学校文化の顕在化とカウンターカルチャーの登場
1970年代後半から注目されたのが、学校に対する不信感や反抗を表明する「反学校文化」の顕在化です。
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背景
- 高校進学率が90%を超えてユニバーサル化。
- 大学や短大進学率も一般化し、不本意修学や不登校、対教師暴力などの問題が社会的に関心を集めるようになりました。
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カウンターカルチャーの視点
- 教師への批判的・反抗的な態度や行動が、単なる逸脱や問題行動ではなく、学校システムや権威に対する批判や抵抗を示す「対抗文化」として捉えられるようになりました。
この新しい視点は、生徒たちの行動を学校社会の変容と結びつけて理解しようとするものでした。