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咀嚼の健康効果メカニズム(食と健康第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

咀嚼の仕組みと健康効果

咀嚼(そしゃく)とは「食物を噛み砕く」ことで、嚥下(えんげ)とともに消化吸収の最初の段階を担います。以下、そのメカニズムと全身への効果をご説明します。

1. 唾液分泌の促進

  • 咀嚼回数が増えると、耳下腺顎下腺舌下腺の三大唾液腺が刺激を受け、唾液の分泌量が増加します。

  • 唾液にはムチン(粘性タンパク質)やα‐アミラーゼ(デンプン分解酵素)が含まれ、口腔内での物理的・化学的消化を助けます。

  • ムチンの粘度により、食塊(ボーラス)が滑らかになり、口腔粘膜の保護や抗菌作用も発揮されます。

2. 消化吸収の効率化

  • 唾液中のα‐アミラーゼがデンプンを部分分解し、食物の口腔内滞在中に化学的消化が進むことで、消化吸収率が高まります。

  • 食塊がゆっくり食道へ送られるため、急激な血糖上昇を抑制し、インスリン分泌を穏やかにします。

3. 脳機能への好影響

  • 咀嚼運動は、咀嚼筋や顎関節だけでなく、脳幹や大脳皮質を刺激します。

  • これにより、記憶力向上注意力改善ストレス緩和といった認知機能の維持・向上効果が報告されています。

4. 高齢者の健康長寿への寄与

  • 高齢者では、咀嚼能力の低下が栄養摂取量の減少誤嚥(ごえん)リスクを招き、健康寿命を短縮させる要因となります。

  • 歯を十分に保有し、咀嚼機能を維持することで、全身の健康維持および介護予防にもつながります。


咀嚼の主な健康効果一覧

  1. 唾液分泌の促進

  2. 食塊形成の最適化

  3. 消化管ホルモン分泌の活性化

  4. 記憶力・注意力の向上

  5. ストレス緩和

  6. 血糖値上昇の抑制

  7. 口腔粘膜の保護・抗菌作用