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嚥下障害と誤嚥性肺炎の予防対策(食と健康第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

嚥下の仕組みと嚥下障害の要因

嚥下(えんげ)とは

嚥下とは、口腔から咽頭・食道を経て胃へ食塊(ボーラス)を送り込む一連の動作を指します。食道まで安全に食物を送るためには、咀嚼に続く「口腔相」「咽頭相」「食道相」の3相が協調し、脳幹にある嚥下中枢の指令で無意識に制御されます。

  1. 口腔相:咀嚼済みの食塊を舌で咽頭まで送り出す段階

  2. 咽頭相:軟口蓋の挙上で鼻腔を閉じ、喉頭蓋が気管入口を覆い、声門が閉じることで気道を防御しつつ、咽頭筋が収縮して食塊を食道入口へ送る段階

  3. 食道相:食道の蠕動(ぜんどう)運動で食塊を胃へ送る段階

誤嚥性肺炎と死因順位

高齢化に伴い、誤嚥性肺炎(嚥下障害による誤嚥が原因の肺炎)が増加しています。厚生労働省の死因順位(最新年)では、

  1. 悪性新生物(がん)

  2. 心疾患

  3. 老衰

  4. 脳血管疾患

  5. 肺炎(その大部分が誤嚥性肺炎)
    と続きます。嚥下機能の低下が高齢者の肺炎リスクを高める大きな要因です。

嚥下障害を起こす主な疾患

嚥下障害の原因として最も多いのは脳卒中(約60%)で、具体的には、

  • 脳梗塞

  • 脳出血

  • くも膜下出血
    などに続発する嚥下筋群の運動制御障害です。脳幹や皮質の損傷が、嚥下中枢や嚥下関連筋の協調運動を阻害します。

嚥下障害への対応

  • 嚥下評価:嚥下検査(嚥下造影や嚥下内視鏡検査)で安全性を確認

  • 食形態の工夫:ゼリー食や刻み食など、咀嚼・嚥下しやすい介護食の導入

  • リハビリテーション:嚥下体操や口腔機能訓練で嚥下筋を強化

  • 環境整備:姿勢保持や食事時の声かけで誤嚥リスクを低減