ーーーー講義録始めーーーー
お茶やジュースなどの普通の液体は、高齢者の嚥下(えんげ)障害者には飲み込みにくい飲料になります。先ほど嚥下のメカニズムを確認しましたが、液体が喉を通過するスピードが速いと、喉頭蓋(こうとうがい)や声門が閉じきれず、誤嚥を起こす恐れがあります。
そこで、病院や介護施設では、お茶や水にとろみ剤を用いて適度に粘度をつけた「とろみ飲料」を提供しています。とろみの濃度は、看護師や介護ヘルパーが利用者一人ひとりの嚥下状態に合わせて調整しますが、この作業が日々の介護負担となっています。
少子高齢化に伴い嚥下障害者が増える中、介護者の負担軽減は喫緊の課題です。そこで、とろみ調整を自動化するとろみサーバーを導入する施設が増えています。
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ボタン操作だけで決まった量のお茶に均一にとろみをつけ、
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およそ1.5Lの飲料を短時間で準備可能。
介護スタッフは、毎食(朝・昼・夕)のとろみ調整作業を省力化でき、その間に他のケア業務──体位変換や服薬介助、見守りなど──に専念できます。また、一貫した粘度管理で安全・清潔な提供が可能になり、嚥下リスクの低減にも資します。
とろみの度合いは、嚥下障害の程度や個人の飲み込み能力に合わせて最適化する必要があります。専門職による適切な指導のもと、自宅介護でも同様の自動化機器を導入できれば、高齢者本人だけでなく介護者にも大きなメリットが期待できます。