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凍結酵素法で魅せる嚥下調整食(食と健康第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

嚥下調整食における「見た目」と新技術

誤嚥予防のための嚥下調整食は、栄養摂取を確保するだけでなく、「美味しそうに見える」ことも重要です。食材本来の形状を保ちつつ、やわらかさを実現する技術が各種開発・実用化されています。

凍結酵素法(広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター開発)

  1. 加熱調理後の凍結
    食材を通常の調理法で加熱し、一度凍結させる。

  2. 酵素溶液への浸漬(減圧下)
    凍結した食材を、分解酵素を含む酵素溶液に浸し、減圧処理を行う。

    • 減圧により酵素が食材内部に浸透しやすくなる。

  3. 再加熱による酵素活性化
    食材を適温まで加熱し、酵素分解を進めることで、食材の形状を崩さずにやわらかく仕上げる。

この「凍結酵素法」で作られた冷凍食品(魚の切り身、筑前煮など)は、

  • 見た目は通常の料理そのまま、

  • 力をほとんど入れずに噛み切れるやわらかさ、

という利点を併せ持ち、介護施設のお弁当や在宅嚥下調整食として導入が進んでいます。

見た目の効果

  • 食欲喚起:「美味しそう」と感じることで食欲が増進

  • 心理的満足:食事の楽しみが向上し、食べる意欲を支える

  • QOL向上:味や香り、食感の多様性を維持し、幸福感(ウェルビーイング)を高める

嚥下調整食も、栄養補給の手段としてだけでなく、「食事を楽しむ」文化として提供することが、健康長寿社会において重要です。