ーーーー講義録始めーーーー
嚥下調整食における「見た目」と新技術
誤嚥予防のための嚥下調整食は、栄養摂取を確保するだけでなく、「美味しそうに見える」ことも重要です。食材本来の形状を保ちつつ、やわらかさを実現する技術が各種開発・実用化されています。
凍結酵素法(広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター開発)
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加熱調理後の凍結
食材を通常の調理法で加熱し、一度凍結させる。 -
酵素溶液への浸漬(減圧下)
凍結した食材を、分解酵素を含む酵素溶液に浸し、減圧処理を行う。-
減圧により酵素が食材内部に浸透しやすくなる。
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再加熱による酵素活性化
食材を適温まで加熱し、酵素分解を進めることで、食材の形状を崩さずにやわらかく仕上げる。
この「凍結酵素法」で作られた冷凍食品(魚の切り身、筑前煮など)は、
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見た目は通常の料理そのまま、
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力をほとんど入れずに噛み切れるやわらかさ、
という利点を併せ持ち、介護施設のお弁当や在宅嚥下調整食として導入が進んでいます。
見た目の効果
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食欲喚起:「美味しそう」と感じることで食欲が増進
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心理的満足:食事の楽しみが向上し、食べる意欲を支える
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QOL向上:味や香り、食感の多様性を維持し、幸福感(ウェルビーイング)を高める
嚥下調整食も、栄養補給の手段としてだけでなく、「食事を楽しむ」文化として提供することが、健康長寿社会において重要です。