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高齢者の栄養摂取量とフレイル・サルコペニア
年齢別の栄養摂取量
厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、エネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物の摂取量は、男女ともに50~70代でほぼ横ばいですが、80代になると特にたんぱく質と脂質の摂取量が大きく減少します。
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加齢に伴う咀嚼・嚥下機能の低下や基礎代謝の減少により、摂取量全体が減少するためです。
また、低栄養の指標としてBMI<18.5の割合は、70歳以上で男性17%、女性28%と、他の年代に比べて高くなっています。
フレイルとサルコペニアの基礎概念
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フレイル(虚弱):加齢に伴う身体機能の多面的低下により、転倒・要介護などのリスクが高まった状態。
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判定基準(以下の5項目中3項目以上)
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体重減少(年間5%以上)
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疲労感の訴え
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筋力低下(握力)
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歩行速度低下
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身体活動量の低下
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サルコペニア:骨格筋量の減少に加え、筋力・身体機能の低下を伴う状態。
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フレイルの主要因の一つとされ、たんぱく質と運動による介入が有効。
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フレイルサイクルと栄養の役割
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筋力低下・疲労感↑ → 身体活動量↓ → 基礎代謝↓ → 消費エネルギー量↓
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食欲低下 → 食事量↓ → たんぱく質・エネルギー不足 → さらに筋力低下
この悪循環(フレイルサイクル)を断ち切るため、十分なたんぱく質摂取が不可欠です。
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日本人の食事摂取基準(2020年版)では、高齢者も成人と同等の体重1 kgあたり1.0 g以上のたんぱく質摂取を推奨。
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これは、加齢によるたんぱく質同化能の低下を補うための量です。
高齢者の健康維持には、個々の身体機能や生活状況に応じた栄養管理と適度な運動習慣の両立が肝要です。たんぱく質・脂質・エネルギーの適正確保を図り、フレイル・サルコペニア予防に努めましょう。