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主体性重視の道徳授業改革(道徳教育の理念と実践第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

これからの道徳教育を考えるうえで、いくつか問題点があると思います。まず、私は二つの立場を同時に示し、「どちらが正しいのか」「自分はどちらに賛同すべきか」を考えさせるような教材が好きでした。単純に「こういう人は立派だ」と価値判断を一方的に示すだけの教材では、心に響かなかったからです。自分で深く考えさせる道徳の授業には、より大きな意義があると感じています。

先日、教育実習で道徳の授業を見せていただきました。授業前に「道徳の時間はつまらない」と生徒たちから声が聞こえ、人気がないのだなと感じました。しかし実際に授業が始まると、教科書の教材をしっかりと読み、その後の感想も真剣に書いている子が多かったのです。これは、教材そのものは嫌いではなく、授業の内容次第で子どもたちの主体的な学びが促される証拠だと思います。

したがって、教師の意見にただ合わせるだけではなく、子どもたちがもっと深く考え、自分の言葉で表現できるような授業にしていく必要があります。それによって、権威だけに頼らず、子どもたち自身の考えや他者理解を重視する道徳教育が実現するでしょう。

もちろん、すべての価値観を理解し合えるわけではありません。互いに理解し合う関係は、時間をかけて関わり合う中で生まれてくるものです。私自身も、なかなか馴染めず、生きづらさを感じた経験があります。しかし、形式的な「こうあるべき」論とは切り離して、本質的な相互理解の可能性と、その限界を正面から扱う場を学校教育にも設けることが大切だと考えています。これによって、子どもたちは「分かり合える場所」と「分かり合えない場所」をそれぞれ認識し、より自分らしく生きる力を育むことができるでしょう。