ーーーー講義録始めーーーー
それでは、なぜ肥満、特に内臓脂肪蓄積が進むとメタボリックシンドロームを発症しやすくなるのか、そのメカニズムを見ていきましょう。
まず注目すべきキーワードは インスリン抵抗性 です。
ライフスタイルの乱れ(過剰摂取+運動不足) → 肥満(特に内臓脂肪蓄積) → インスリン抵抗性 → メタボリックシンドローム、という流れが数十年前から指摘されています。
インスリンの働きとインスリン抵抗性
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インスリンとは何か
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膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血中のブドウ糖(血糖)を各組織に取り込ませ、血糖値を低下させる役割があります。
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正常時の流れ
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朝ご飯などで炭水化物を摂取すると、消化管でブドウ糖に分解され、血中糖濃度が上昇します。
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それを感知した膵臓がインスリンを分泌。
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インスリンは主に肝臓・骨格筋・脂肪組織に作用し、以下を促進します:
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肝臓:余剰ブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵
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骨格筋:グルコース取り込み+グリコーゲン合成
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脂肪組織:脂肪酸合成の促進
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これにより血糖値の急激な上昇が抑えられます。
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インスリン抵抗性の成立
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内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から遊離脂肪酸や炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)が過剰に分泌され、肝臓や筋肉でのインスリンシグナル伝達が障害されます。
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結果として、同量のインスリンでは十分にグルコースを取り込めなくなり、「インスリン抵抗性」が生じ、血糖値が高い状態(高血糖)を招きます。
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図5 インスリン作用と抵抗性のメカニズム(イメージ図)
[食事でのブドウ糖増加]
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[膵β細胞]───インスリン分泌
↓
┌─────────────┬─────────────┐
肝臓:グリコーゲン合成 │ 筋肉:グルコース取り込み │
│ ↑ │ ↑ │
└─────────────┴─────────────┘
↓
[血糖値の低下]
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内臓脂肪蓄積 → 遊離脂肪酸↑/炎症性サイトカイン↑
↓
[インスリン受容体シグナル障害]
↓
[インスリン抵抗性:グルコース取り込み低下]
↓
[持続的高血糖 → メタボリックシンドローム発症リスク↑]