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メタボ発症のインスリン抵抗性機序(健康長寿のためのスポートロジー第5回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

それでは、なぜ肥満、特に内臓脂肪蓄積が進むとメタボリックシンドロームを発症しやすくなるのか、そのメカニズムを見ていきましょう。


まず注目すべきキーワードは インスリン抵抗性 です。
ライフスタイルの乱れ(過剰摂取+運動不足) → 肥満(特に内臓脂肪蓄積) → インスリン抵抗性 → メタボリックシンドローム、という流れが数十年前から指摘されています。

インスリンの働きとインスリン抵抗性

  1. インスリンとは何か

    • 膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血中のブドウ糖(血糖)を各組織に取り込ませ、血糖値を低下させる役割があります。

  2. 正常時の流れ

    • 朝ご飯などで炭水化物を摂取すると、消化管でブドウ糖に分解され、血中糖濃度が上昇します。

    • それを感知した膵臓がインスリンを分泌。

    • インスリンは主に肝臓・骨格筋・脂肪組織に作用し、以下を促進します:

      1. 肝臓:余剰ブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵

      2. 骨格筋:グルコース取り込み+グリコーゲン合成

      3. 脂肪組織:脂肪酸合成の促進

    • これにより血糖値の急激な上昇が抑えられます。

  3. インスリン抵抗性の成立

    • 内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から遊離脂肪酸や炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)が過剰に分泌され、肝臓や筋肉でのインスリンシグナル伝達が障害されます。

    • 結果として、同量のインスリンでは十分にグルコースを取り込めなくなり、「インスリン抵抗性」が生じ、血糖値が高い状態(高血糖)を招きます。


図5 インスリン作用と抵抗性のメカニズム(イメージ図)

 

[食事でのブドウ糖増加]  
        ↓  
[膵β細胞]───インスリン分泌  
        ↓  
┌─────────────┬─────────────┐  
肝臓:グリコーゲン合成  │   筋肉:グルコース取り込み  │  
│        ↑                  │         ↑                   │  
└─────────────┴─────────────┘  
        ↓  
[血糖値の低下]  

――――――――――――――――  
内臓脂肪蓄積 → 遊離脂肪酸↑/炎症性サイトカイン↑  
        ↓  
[インスリン受容体シグナル障害]  
        ↓  
[インスリン抵抗性:グルコース取り込み低下]  
        ↓  
[持続的高血糖 → メタボリックシンドローム発症リスク↑]