ーーーー講義録始めーーーー
動機づけ面接とは
動機づけ面接(Motivational Interviewing: MI)は、変化したい気持ちがある一方で「できない」「まだしたくない」という感情も抱く、**変化に対する両価性(アンビバレンス)**を持つクライアントに働きかける面接技法です。
変化への両価性の理解
多くのクライアントは次のような葛藤を抱えています:
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「変わりたいが、変わるのが怖い」
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「問題とは思うが、今のままの方が楽だ」
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「治療を受けたいが、努力するのは辛い」
動機づけ面接は、このような抵抗を減らし、本人が望む方向へ自発的に進めるよう支援することを目的とします。
理論的背景
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来談者中心療法との関連
Carl Rogersの来談者中心療法に基づき、自己決定・自己効力感・無条件の肯定的配慮・共感的理解を重視します。 -
認知行動療法との併用
認知行動療法(CBT)とも併用可能であり、エビデンスによって有効性が支持されています。特にCBTの初期段階での関係構築や動機づけの強化に役立ちます。
動機づけ面接の基本的前提
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協働的関係
セラピストとクライアントは対等なパートナーシップを築き、一方的な指導ではなく共同作業として治療を進めます。 -
思いやりと共感
クライアントの幸福と福祉を第一に考え、相手の立場に立った理解を重視します。 -
能力への信頼
クライアントの持つ力や可能性を尊重し、本人の中にある変化の力を引き出すことに焦点を当てます。
動機づけ面接の4つの原則
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共感を表明する
クライアントを理解し、批判を避け、受容的に対応する。 -
矛盾を拡大する
価値観と現実のギャップを明確化し、変化への動機を喚起する。 -
抵抗とともに進む
抵抗を自然な反応と捉え、無理に押し切らず尊重しながら関わる。 -
自己効力感を支える
「自分にもできる」という感覚を強め、小さな成功体験を積み重ねる。
変化段階理論との関連
MIはProchaska & DiClementeの**変化段階モデル(TTM)**と関連します。
ただし、TTMの「前熟考・熟考・準備・行動・維持」と、MIのプロセスである「関係構築(Engaging)・フォーカス(Focusing)・喚起(Evoking)・計画(Planning)」は異なる概念であり、両者は補完的に用いられます。
従来の指導的アプローチとの違い
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指導反射(Righting Reflex)の問題点
セラピストが「正しいことを言えば変わる」と考え、一方的に助言・説得・要求を行うことは逆効果となりやすい。 -
MIのアプローチ
クライアント自身の動機を引き出し、両価性を受容し、相手のペースに合わせ、自己決定を支援する。
まとめ
動機づけ面接は、変化への葛藤を抱えるクライアントに寄り添い、自らの力で変化を実現できるよう支援する面接法です。認知行動療法を含む多くの心理療法と併用可能であり、その理解と実践は治療効果を高めるために不可欠です。次回は、具体的な技法について学びます。
