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動機づけ面接の実践技術とまとめ #放送大学講義録(認知行動療法第3回)

ーーーー講義録始めーーーー

 

OARS技術:動機づけ面接の基本応答技術

動機づけ面接(MI)では、面接者が活用する基本的な応答技術として OARS が整理されています。

O - Open-ended Questions(開かれた質問)

  • クライアントが自由に表現できる質問

  • 「はい・いいえ」で終わらない質問

  • クライアント主体の対話を促す

  • 例:「どのように感じましたか?」「そのことについて、もう少し詳しく聞かせてください」

A - Affirmations(承認)

  • クライアントの努力や強みを認め、伝える

  • 自己効力感の向上に寄与する

  • 例:「相談に来られたこと自体が勇気ある行動ですね」

R - Reflective Listening(反射的傾聴)

  • クライアントの言葉や意味をとらえて返す

  • 単なる繰り返しではなく、気持ちやニュアンスを含めて応答する

  • 例:「授業に出たい気持ちがある一方で、不安から眠れなくなっているのですね」

S - Summaries(要約)

  • 会話の要点を整理して伝え返す

  • 価値観や目標を再確認し、次のステップへの橋渡しを行う


実践例の比較分析

不適切な関わり方(指導反射の例)

 

セラピスト:「その習慣をこのまま続けていくと、かなり良くないことになるでしょうね。寝る前の考え事は一般的にも良くないと言いますし、寝る前にいろいろ考える癖はすぐにでもやめるべきです。」

クライエント:「そうなんですが、どうしても考えてしまうというか...」

セラピスト:「授業に行けない状態が続いてもいいんですか?やるしかないですよ。やり方についてはこれから伝えるので、メモしてください。」

 

  • 一方的な説得や助言の押し付け

  • クライアントの感情を軽視

  • 性急な解決策提示

適切な関わり方(MIの例)

 

セラピスト:「睡眠不足になっていたことが問題のようですね。夜寝るのが遅くなるのは、寝る前にいろいろ考えてしまい焦ってしまうことが習慣化してしまったからなんですね。」

クライエント:「はい、そうです。」

セラピスト:「その習慣をやめることができるようになれば、あなたにとって助けになるように感じたのですが、それについてはどう思いますか?」

クライエント:「ぜひやめて早く寝られるようになりたいんです。ただ、どうしても考えてしまうというか...」

セラピスト:「やめたい気持ちはあるものの、すぐには難しい感じなんですね。どのようなことを考えてしまうのですか?」

クライエント:「今日も眠れなかったらどうしよう、明日も授業に出られなかったらどうしよう、とかが多い気がします。」

セラピスト:「なるほど。あなたが授業に出席することをとても大事に思っているんですね。そして頑張りたいとも思っている。」

クライエント:「大学に入ったら授業を頑張りたいと思っていたので、確かに頑張りたいという思いがあります。」

セラピスト:「頑張りたいという思いがあるからこそ、眠れない状態が続いてしまうと『また眠れなかったら』『授業に行けなかったら』と焦りますよね。」

 

  • クライアントの語りに耳を傾け、意味を反射的に返す

  • 価値観を尊重し、アンビバレンスを受容する

  • 協働的に変化の可能性を探る


動機づけ面接の効果的な要素

  1. アンビバレンスの受容:矛盾する感情を自然なものとして尊重する

  2. 価値観の明確化:クライアントが大切にすることを共有し、現状とのギャップを認識する

  3. 自己効力感の支援:小さな成功を積み重ね、「できるかもしれない」という感覚を強める

  4. 協働的関係の維持:一方的な指示ではなく、パートナーシップを重視する


認知行動療法への統合

  • 治療初期:関係性構築と動機づけ強化に有効

  • 治療過程:課題(ホームワーク)への抵抗や新技法導入時に活用できる

  • 治療各段階:アセスメントでの動機確認、目標設定での価値観反映、介入中の抵抗対処、維持段階でのモチベーション支援


まとめ:効果的な認知行動療法のために

このシリーズで学んだように、認知行動療法の効果を最大化するには:

  • 関係性が治療効果に与える影響の理解

  • ロジャーズに基づく共感的理解

  • マイクロカウンセリングの基礎技法

  • 非言語・言語的コミュニケーションの活用

  • 動機づけ面接によるアンビバレンスへの対応

  • 技法の統合的実践

さらに、自己モニタリング・継続学習・スーパービジョン・事例研究を通じて、技術を継続的に高めることが重要です。最終的な目標は、クライアントの幸福と回復に資する質の高い治療の実践です。


参考文献

  • Ivey, A. E. (2013). Intentional Interviewing and Counseling

  • Miller, W. R., & Rollnick, S. (2012). Motivational Interviewing: Third Edition

  • Beck, A. T., Rush, A. J., Shaw, B. F., & Emery, G. (1979). Cognitive Therapy of Depression

  • Rogers, C. R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change

 

 

 

 

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