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勤務間インターバル・割増賃金・高度プロフェッショナル制度 #放送大学講義録(雇用社会と法第6回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

勤務間インターバル制度

次に、勤務間インターバル制度について見ていきましょう。
この制度は、2019年(平成31年)4月の改正により事業主の努力義務として労働時間等設定改善法第2条の2に規定されました。

従来、日本の労働法制には、勤務と勤務の間に一定の休息時間を設けるという法的規制は存在していませんでした。そのため、深夜まで勤務した後に翌朝早く出勤するような勤務形態も可能でした。

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から次の始業までに一定時間以上の休息時間を設けることで、生活時間や睡眠時間を確保し、労働者の健康保持を図る仕組みです。

この考え方は、EUにおける労働時間指令(Directive 2003/88/EC)を参考にしています。EUでは、24時間につき少なくとも連続11時間の休息時間を付与すること、また7日ごとに最低連続24時間の休息を与えることが義務付けられています。

勤務間インターバル制度の導入は、労働者の健康確保やワークライフバランスの向上に寄与することが期待されています。


割増賃金

次に、割増賃金について確認していきましょう。
労働基準法第37条により、時間外労働・休日労働・深夜労働を行った場合には、使用者に割増賃金の支払い義務が課されています。

割増賃金率は、労働基準法施行規則第19条で定められています。

  • 時間外労働:25%以上の割増

  • 深夜労働(22時~翌5時):25%以上の割増

  • 休日労働(法定休日労働):35%以上の割増

  • 月60時間を超える時間外労働:50%以上の割増(中小企業も2023年4月より適用)

重複する場合の割増率は次の通りです。

  • 時間外+深夜労働:50%以上

  • 月60時間超+深夜労働:75%以上

  • 休日+深夜労働:60%以上

この割増賃金制度は、正社員だけでなくアルバイトやパートタイム労働者にも適用されます。したがって、勤務形態を問わず、割増率の理解は非常に重要です。


労働時間の適正把握と健康管理

次に、労働時間の適正把握と健康管理について確認していきましょう。

2018年の法改正により、労働安全衛生法第66条の8の3が新設され、使用者には労働時間の把握義務が課されました。
また、管理監督者や裁量労働制の適用者にも労働時間管理が及ぶことが明確化されています。

厚生労働省は2017年1月20日に、

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
を公表しました。

使用者は、原則として自らの現認、またはタイムカード・ICカード・パソコンのログなどの客観的記録をもとに労働時間を確認し、適切に管理する必要があります。

さらに、長時間労働が認められる労働者に対しては、医師による面接指導を実施する義務があります。
残業が一定時間を超えた労働者から申し出があった場合にも、医師面接を行うことが義務化されています。

このように、労働時間の客観的把握と健康管理の強化が2018年の働き方改革によって法定化されたのです。


高度プロフェッショナル制度

最後に、高度プロフェッショナル制度(労働基準法第41条の2)について確認します。

この制度は、高度な専門的知識や経験を有する労働者に対して、一定の手続を経たうえで、労働時間・休憩・休日・割増賃金の規定を適用除外とする仕組みです。

対象者には以下の条件があります。

  1. 年収が**1,075万円以上(省令で定める基準額)**であること。

  2. 高度専門的知識を要する業務(金融ディーラー、アナリスト、研究開発、コンサルタントなど)に従事していること。

  3. 始業・終業時刻が指定されず、働く時間や配分を自ら決定できること。

  4. 労使委員会の5分の4以上の多数による決議および同意書の作成・届出がなされていること。

この制度導入の背景には、成果や専門性に応じた多様な働き方を実現する目的があります。
従来は「労働時間に比例して賃金が支払われる」という前提がありましたが、専門的・裁量的な働き方が増加する中で、時間ではなく成果に基づく評価制度が求められるようになったのです。

今後、労働時間と報酬が必ずしも連動しない働き方は、さらに拡大していくと考えられます。
その中で、公正な労働条件と健康確保の両立が引き続き重要な課題となるでしょう。