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講義の導入と女性労働力の現状 #放送大学講義録(雇用社会と法第8回その1)

ーーーー講義録始めーーーー

 

雇用社会と法、第8回のテーマは「雇用平等と労働者の人権」です。近年、働き方は急速に多様化しています。これまでの雇用社会は男性中心で形成されてきましたが、現在では、女性や高齢者、外国人、障害者など、多様な背景をもつ人々が労働市場に参加し、収入を得ています。

このように働き方が多様化する中で、雇用の分野における平等の実現労働者の人権の保障が改めて重要な課題となっています。特に、労働者に対する差別を禁止し、機会の均等を確保する「雇用平等」の考え方は、現代の労働政策の中核をなすものです。

この講義も第8回となり、折り返し点に入りました。これまでの内容を振り返りつつ、気持ちを新たに学習を深めていきましょう。今回の講義では、以下の3つのテーマを中心に考えていきます。


① 雇用平等

雇用平等の論点には、性別、障害、国籍、年齢など様々な側面がありますが、本講義では特に男女の雇用平等を中心に検討します。男女雇用機会均等法(1985年制定、2007年改正)は、性別による差別を禁止し、女性の職業選択と昇進機会の平等を保障する基本法として位置づけられています。


② 労働者の人権

労働基準法は、賃金差別や強制労働の禁止など、労働者の基本的人権を保護する最低基準を定めています。また、労働契約法や憲法第27条・第28条も、働く権利・団結権を保障しており、これらは人権の枠組みの中で理解されるべきです。


③ ハラスメントの防止

セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントなど、職場におけるハラスメント問題は深刻化しています。
これらは男女雇用機会均等法第11条および労働施策総合推進法第30条の2などによって、事業主に防止措置の義務が課されています。
本講義では、ハラスメントを未然に防ぎ、発生時にどのように対応すべきかを具体的に考察します。


考えてほしいテーマ

今回、皆さんに考えてほしいのは、「日本は女性が真に活躍できる社会になっているか」という問いです。
2015年(平成27年)に成立し、2016年(平成28年)4月に施行された**女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)**は、常時雇用する労働者が301人以上の事業主に対して、行動計画の策定・届出・公表を義務付け、女性の登用状況を「見える化」する仕組みを導入しました。
また、一定の基準を満たした企業には「えるぼし認定」などの制度が設けられています。

講義を通じて、女性が働きやすく活躍できる環境がどの程度整っているのか、また何がまだ不足しているのかを、皆さん自身の視点で考察してみましょう。


女性労働力の現状

それでは、第1のテーマである「雇用平等」について、データをもとに現状を確認します。

日本の労働力人口(15歳以上で就業者+完全失業者)は、2019年に6,887万人でした。そのうち、女性の労働力人口は3,057万人(前年比+44万人)、**男性は3,829万人(前年比+11万人)**で、女性の増加傾向が続いています(総務省統計局『労働力調査2019年平均結果』)。

女性の労働力率(労働力人口/女性人口)は44.4%と過去最高を更新し、1985年(39.7%)と比較して大きく上昇しています。特に、30〜40代女性の就業率が上昇しており、「M字カーブ」の改善が見られます(内閣府『男女共同参画白書2020』)。

以下のグラフは、1985年から2019年にかけての女性労働力人口の推移を示しています。


📊 図表1:女性労働力人口と労働力率の推移(1985〜2019年)

労働力人口総数(万人) 女性労働力人口(万人) 女性比率(%)
1985 6,501 2,585 39.7
1995 6,652 2,842 42.7
2005 6,578 2,867 43.6
2015 6,635 2,970 44.8
2019 6,887 3,057 44.4

(出典:総務省統計局『労働力調査年報2019年』)


まとめ

以上のように、女性の労働参加は着実に進展しており、制度面でも雇用平等の法整備が進められています。しかし、依然として管理職比率や賃金格差などの課題が残されており、今後は「平等な機会」から「実質的な平等」への転換が求められます。

 

参考文献(根拠)

  • 総務省統計局『労働力調査年報(2019年)』

  • 厚生労働省『女性活躍推進法の概要』(2020年版)

  • 内閣府『男女共同参画白書 2020年版』

  • 労働施策総合推進法(平成30年改正)

  • 男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号、平成19年改正)