ーーーー講義録始めーーーー
次に、女性の年齢階級別労働力率について見てみましょう。
年齢階級別労働力率とは、各年齢層における女性のうち、就業者または求職活動を行っている者の割合を示したものです。横軸は年齢階層(15〜64歳など)、縦軸は労働力率を示しています。このデータをグラフ化することで、女性の就業動向の特徴を視覚的に理解できます。
M字カーブの変化
2009年のデータを見ると、30歳代前半から40歳前後にかけて女性の労働力率が低下していることがわかります。いわゆる「M字カーブ」と呼ばれる現象です。
このM字カーブとは、女性の年齢別労働力率の特徴を表したもので、グラフがアルファベットの「M」のような形を描くことから名づけられています。結婚や出産、育児などのライフイベントを契機に一時的に離職する女性が多いことが、この形の要因とされています。
総務省『労働力調査(2009年平均結果)』によると、35〜39歳の女性労働力率は65.5%でした。
一方、同調査の2019年平均結果では同年齢層の労働力率が**76.7%**に上昇しています。
この10年間でM字の谷が浅くなり、グラフ全体が「台形」に近い形へと変化していることが確認できます。つまり、結婚や出産を経ても働き続ける30〜40代の女性が増えており、M字カーブの平準化が進んでいるといえます。
M字カーブ解消の要因
では、なぜこのような変化が生じたのでしょうか。
総務省の分析によれば、有配偶者(既婚女性)の労働力率上昇が大きな要因とされています。かつては結婚・出産を機に退職する女性が多数を占めていましたが、現在は配偶者を持ちながら就業を継続する女性が増加しています。
この傾向は、共働き世帯の増加と整合的です。総務省の統計によれば、1980年には共働き世帯は約600万世帯でしたが、2019年には1,240万世帯を超えています。
このことから、家庭と仕事を両立させる社会構造が進展しつつあることが読み取れます。
📊 図表:女性の年齢階級別労働力率の推移(2009年・2019年)
| 年齢階級 | 2009年(%) | 2019年(%) |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 77.6 | 83.8 |
| 25〜29歳 | 81.6 | 88.4 |
| 30〜34歳 | 69.4 | 78.4 |
| 35〜39歳 | 65.5 | 76.7 |
| 40〜44歳 | 72.0 | 79.5 |
| 45〜49歳 | 76.6 | 82.3 |
| 50〜54歳 | 77.5 | 81.7 |
| 55〜59歳 | 71.8 | 77.8 |
(出典:総務省統計局『労働力調査年報2019年平均結果』より作成)
まとめ
このように、女性の年齢階級別労働力率は2000年代後半以降大きく変化しています。
M字カーブの谷が浅まり、結婚・出産後も働き続ける女性が増加していることは、
①企業による育児休業制度・時短勤務制度の拡充、
②保育所等の子育て支援環境の整備、
③社会全体でのワークライフバランス意識の浸透、
といった要因の複合的な成果と考えられます。
今後は、単に労働力率の上昇を目指すだけでなく、働きやすさの質的向上、すなわちキャリアの継続性・職場環境改善・男女間賃金格差の是正などが求められます。
参考文献・根拠資料
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総務省統計局『労働力調査年報(2019年平均結果)』
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内閣府『男女共同参画白書 2020年版』
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厚生労働省『働き方改革実行計画(2017年)』
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国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(2019年)』


