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学習動機づけの8つの原則(前編) #放送大学講義録(成人の発達と学習第5回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

学習と感情の深い関係

さて、学習する動機についていくつか考えてまいりました。私たちがやる気を起こす場合、内発的動機が重要であること、そして、没頭するようなフローと言われるような状態は、内発的動機により呼び起こされ、またさらなる内発的動機を呼び起こす状態でもあります。

学習には、楽しさや喜びといった感情が大事であるということなのです。

Verhaegh(Verhaeghe)の8つの原則

この感情と学習動機という点で、教育方法学を専門とするベルギーの教育学者である Verhaeghe は、重要とされる8つの原則を挙げています。ここでは、学習に対し強く動機づけられる場合はどういう時なのかについて、この8つの原則に沿って考えてみたいと思います。

第1の原則:自己効力感

第1の原則は、自分への期待に対し、それをやり切る能力があると感じる場合、強く動機づけられるということです。

「できる」という自分に対する自信や信頼は自己効力感と呼ばれていますが、これはナルシストのようなうぬぼれとは違います。自己効力感は、ナルシストとは違って、主として他の人、いわゆる第三者からの評価やフィードバック、あるいは他者との比較といった社会的な関わりや、自分自身の成功経験などを通して育まれるものです。他の人との交わりの中から自己効力感が生まれてくることも多いのです。

一人相撲で一人だけで勉強していても、繰り返しの成功経験を通じて自己効力感を高めていくことは可能ですが、そうした経験を支えるフィードバックや評価の多くは、やはり他者との関わりの中で得られることが少なくありません。

確かにそうですね。自己効力感は他者がいることで自分が相対化されることや、自分の成功経験が意味づけられることを通して高まりやすいものなのでしょう。部活や受験やビジネスで成功すると自己効力感が高まるのはそのためです。他の人にやはり評価されている、そういう部分が必要なのです。

第2の原則:行動と目標のつながり

第2の原則は、行動と達成目標との間に一定のつながりが見出されると強く動機づけられるということです。

受験の世界はまさにそうです。受験勉強を長く続ける1つの秘訣としては、内発的動機づけが一番良かったと小宮山さんは経験から感じています。

この受験制度というのは、多くの人が、自分が生まれ育った場所に関わらず公平に参加できる競争であると位置づけてきた制度です。楽をして合格切符を手に入れようとする発想とはまた違います。

社会に出てから苦労することが予想されるから受験勉強しなさいというわけではありませんが、やはり受験の世界は、行動と達成の目標が非常に明白ですから、学びの1つのきっかけになるということは、勉強のやり方によっては重要だと考えられます。

感動が学習を促進する

小中学校の学びは、新しい出来事の連続だと思います。例えば、理科の授業で光合成の仕組みを知ると、自然界がなんでこんな不思議なサイクルになっているのか、炭素1つ取り上げても、それが循環しているということを見て感動する子どもはたくさんいます。

学ぶという行動によって、感動という心地よい達成感、これは非常に重要です。

そのような感動がきっと子どもたちの内発的動機づけにつながるのでしょう。

数学における「わかった」と「できた」

受験勉強でも同じです。もう少し数学の例で詳しくお話ししましょう。

例えば、数学の計算の答えが合っていると、嬉しくて「できた」と思いますよね。これは1つの達成感です。

また、連立方程式の文章題や図形の証明問題が解けた時、この時は、「わかった」「できた」と2つの達成感があります。文章題の意味が分かり、計算してできたということになります。図形の証明問題を考えて解き方が分かった。そして最後まで証明できたというやはり2つの達成感がこの中にはあります。

算数、数学にチャレンジして正解を出すことによって、実は「できた」と「わかった」という二重の喜びを感じるために、小中学校では算数や数学が注目される科目なのかもしれません。成功した場合の達成感を強く感じる教科と言っても良いかもしれません。

この場合、「できた」「わかった」では達成感の度合いが違います。「わかった」という達成感の方が発見の驚きや喜びが強いので、より内発的動機づけに繋がると考えられます。「わかった」は発見の驚き、「できた」は満足感につながるのではないでしょうか。

「わかった」というのと「できた」は違うのですね。「わかった」の方が確かに内発的動機づけに繋がりそうです。

 

(補助)学習動機づけ第1・第2原則の整理表

講義内容の整理として、今回扱われた第1・第2原則を簡単に表にまとめます。

 

原則 内容の要約 具体例(講義より)
第1原則:自己効力感 「自分にはやり遂げる力がある」という感覚が強いほど、学習に対する動機づけが高まる。自己効力感は、成功経験や他者からの評価・フィードバックなどを通して育つ。 部活や受験、仕事での成功体験が「自分ならできる」という感覚を強め、次の挑戦への意欲につながる。
第2原則:行動‐目標のつながり 自分の行動が具体的な目標達成につながると実感できるほど、学習への動機づけは強まる。 受験勉強では、「この勉強が志望校合格につながる」とイメージできることで、長期的な学習が続きやすい。