ーーーー講義録始めーーーー
1990年代あたりから、それまでの学校への明確な反抗や拒否感を表明するようなサブカルチャーが後退し、むしろ学校に適応しながらも、多様で柔軟な意味付けをもって住み分けるようなサブカルチャーが顕在化しました。その一例として、ジェンダーサブカルチャーが目に見える形で現れてきたことが挙げられます。
これまで、生徒文化や反学校文化が論じられる際、基本的に男子の生徒文化が前提となることが多かったといえます。中産階級的あるいは管理的な学校教育に対し、生徒たちがどのように対抗し、自律的な文化を作ってきたかという議論においても、対象は男子文化であることが一般的でした。
しかし、女子のサブカルチャーもまた、学校文化と必ずしも同質的ではない異質な自律的文化を形成してきました。特に1990年代以降、その特徴が顕在化してきたのです。
女子生徒サブカルチャーの特徴
女子のサブカルチャーには、女子校特有の文化に共通する特徴を見出すことができます。評論家の辛酸なめ子氏は、自身の女子校経験を基に『女子校育ち』という本を出版しており、その中で女子校の生活や文化を取材・考察しています。彼女は、一般に女子校と聞くと「大奥」のような陰湿なイメージを持たれることが多いが、実際にはその逆であると述べています。
女子校では、男子の目を意識する必要がないため、女子だけで力仕事を含め何でも行い、タフな性格が育つ傾向があるといいます。男子を意識しない環境下では、自らの野性を発揮し、のびのびと過ごせることが多いのです。その結果、いわゆる「女子力」を磨く機会は少ないかもしれませんが、自由な批判精神や個性を育む余地があったと強調しています。
さらに、異性がいない環境では、「女の敵は女」という見方ではなく、同性に対する憧れや相手の良いところを素直に認める姿勢が育まれる点も特徴的です。同性同士の絆や関係を大切にする文化が形成されるのです。
女子校出身者の表現活動
辛酸なめ子氏は、女子校出身者の中には、女性の目を意識した表現活動を行う人物が多いと指摘しています。例として、レディー・ガガ、オノ・ヨーコ、中村うさぎなどを挙げています。これらの人物には、女性同士の対等で自由な絆を土台とした文化が影響しているのではないかと述べています。
こうした「女子同士の絆」に基づいて作られる自由で対等なサブカルチャーは、女子生徒サブカルチャーをポジティブに捉える視点を示しています。