ーーーー講義録始めーーーー
それでは、「メタボリックシンドローム」が登場し、注目されるようになった背景を整理しましょう。
近年、糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病が「同時に」発症しやすいことが疫学的に明らかになり、大きな注目を浴びるようになりました。これらは本来それぞれ別の疾患ですが、実際には同じ人に複数合併する例が多い。そこで「共通の原因因子があり、それが各疾患を同時に引き起こしているのではないか」という仮説が立てられました。
さらに解析を進めると、
-
肥満(特に内臓脂肪蓄積型肥満)
-
インスリン抵抗性
を有する人ほど、糖尿病や脂質異常症、高血圧の合併リスクが高いことがわかりました。
図3 メタボリックシンドローム発症のメカニズム(イメージ図)
-
内臓脂肪蓄積 →
-
インスリン抵抗性 →
-
高血糖・高血圧・脂質異常症 の合併 →
-
メタボリックシンドローム と診断
現在では、内臓脂肪蓄積に加え、上記のうち2項目以上を合併する状態を「メタボリックシンドローム」と定義します。
この状態になると、脳卒中や心筋梗塞などの血管イベントリスクが 2〜3倍 に増加することが示されており、将来の健康予後を左右する重要な疾患概念です。