ーーーー講義録始めーーーー
乱用や依存の対象となる薬物は、覚醒剤のほかにも数多く存在します。たとえばシンナーなどの有機溶剤、マリファナ(大麻)やマジックマッシュルーム(幻覚性きのこ)、さらには向精神薬の乱用など、薬物の種類は年々多様化の傾向を見せています。
マリファナに関しては、海外の一部の国や地域では合法化されており、「ソフトドラッグであり危険性は低い」といった風説が流布されがちです。しかし、この点については慎重な検討が必要です。実際には、マリファナ使用者において他の薬物の併用率が高く、さらに**より依存性の強い薬物へ移行する傾向(いわゆる“ゲートウェイドラッグ仮説”)**が観察されており、重篤な薬物依存の入口となるリスクがある薬物と見なすべきです。
また、違法薬物を使用した状態で自動車を運転し、重大な事故を引き起こした事例が、国内外で過去に多数報道されていることも、私たちが警戒すべき点です。
さて、依存症の対象は物質(substance)だけにとどまりません。たとえばパチンコやギャンブルなど、ある**「行為」にのめり込んで制御不能になるケースもあり、これらは「行為依存(behavioral addiction)」**と呼ばれます。
近年の注目すべき話題としては、2018年にWHOが発表したICD-11(国際疾病分類第11版)において、「ゲーム障害(Gaming Disorder)」が正式な疾患として認定されたことが挙げられます。この背景には、現代の市場経済やメディア環境が、消費者の欲望を戦略的に刺激し、商品の消費やサービスの利用に没頭させる構造的要因があると考えられます。
このような構造が存在する限り、行為依存や新たな依存症の拡大と深刻化は不可避であるとも言えるでしょう。依存症に関する研究のさらなる進展と、より有効で実効性のある治療法の開発が強く望まれます。
