技術系の職種は公務員試験全体では穴場だとも言われていた(法学部の人間は技術もへったくれもないのでうらやましくもあったのだろう)
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さて、このように政策過程の中には評価的な活動と管理的な活動がありますが、両者を適切に結びつけていくことが不可欠です。
そのためには、政府外部で保持される政策領域に関する専門知識についても、ある程度は政府内部で保持する仕組みが必要でしょう。そこで鍵となるのが、技術系職員や専門職という公務員の存在です。
印刷教材の図1をご覧ください。このグラフは、各府省で将来幹部公務員となりうる人材を採用する国家公務員の総合職試験の採用区分を表しています。理工学や農学分野などを学んだ学生が採用される技術系が4割弱いることがわかるでしょう。
特に大学院生を対象とする試験では、法律や経済などの事務系よりも技術系の方が多くなっています。実際、事務系よりも技術系の採用が多い国土交通省や農林水産省などもありますし、主に技術系職員で構成される特許庁や気象庁といった組織もあります。さらに、この他に別の試験で採用される医師や看護師なども、厚生労働省では一定の数を占めます。想像するよりもずっと多くの技術系職員が働いているのが公務員の職場なのだということが言えるでしょう。
こうした技術系職員は、それぞれの分野で専門知識が求められる業務に長く従事します。そのため、業界関係者や学界の専門家との人脈を築き、公共事業や医薬品の許認可をはじめとする科学的な政策形成に関して一定の役割を果たします。ただ、たとえ行政組織の中で関係する業務に従事していたとしても、日々の行政実務に追われる中では、最先端の議論を作り出したり、追いついたりすることは難しいという問題もあります。現代の科学は高度に細分化され、日進月歩で発展していますから、専門領域に関する専門知識という点では外部の専門家に依存せざるを得ないのです。
とすると、技術系職員の役割は一体なんでしょうか。それは、最先端の科学技術の知見を行政制度につなげるために適度に翻訳していくことが中核的な業務ということになるでしょう。専門的リテラシーとも呼ばれます。この専門的リテラシーとは、政府の外部のどこに専門知識があるのかを判断し、それを持つ研究者を諮問機関の委員として人選する能力のことです。その意味で、政策領域に関する専門知識と政策過程に関する専門知識を橋渡しするものとして技術系職員がいると考えることもできるでしょう。
これまでお話ししてきたように、評価的な活動を管理的な活動から適切に区分することによって、政策領域に関する専門家を政策過程に取り入れていく仕組みがあるということが言えます。