ーーーー講義録始めーーーー
危機管理を常に意識する学校文化を醸成し、多角的な視点から状況を分析して方針を決定し、適切なマニュアルを整備することが必要である。最悪の事態を想定した管理体制の構築は、早急に取り組むべき課題といえる。
このような背景から、学校保健安全法は、国に対し各学校における安全の推進を総合的・効果的に図るため、「学校安全の推進に関する計画」を策定すること等を求めている(同法第3条)。
この規定に基づき、「第3次学校安全の推進に関する計画」(以下、「第3次計画」)が令和4年3月に閣議決定され、令和4年度から令和8年度までの5年間を対象として実施されて
いる。第3次計画は、(1)学校が作成する安全計画・危機管理マニュアルに基づく取組の実効性に課題があること、(2)学校安全に関する取組や意識に格差があること、(3)東日本大震災の記憶を風化させず、将来の大規模災害に備えた実践的防災教育を全国的に進める必要があること――という課題認識を踏まえている。
第3次計画は、次の6つの基本的方向性を示している。
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学校安全計画・危機管理マニュアルの見直しサイクルを構築し、実効性を高める。
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地域の多様な主体と密接に連携・協働し、子どもの視点を取り入れた安全対策を推進する。
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すべての学校で実践的・実効的な安全教育を推進する。
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地域の災害リスクを踏まえた実践的な防災教育・訓練を実施する。
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事故情報や学校の取組状況等のデータを活用し、学校安全の「見える化」を進める。
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学校安全に関する意識の向上と安全文化の醸成を図る。
あわせて、第3次計画は目指すべき姿として、①すべての児童生徒等が自ら適切に判断し主体的に行動できるよう安全に関する資質・能力を身に付けること、②学校管理下の死亡事故件数を限りなくゼロに近づけること、③学校管理下の負傷・疾病発生率、とりわけ障害や重度の負傷を伴う事案の減少を図ること、を掲げている。学校現場は、これらの方針を日常の教育活動と防災・安全管理体制に確実に反映させる必要がある。
学校安全推進計画の比較表
| 項目 | 第1次計画(平成24年度~28年度) | 第2次計画(平成29年度~令和3年度) | 第3次計画(令和4年度~8年度) |
|---|---|---|---|
| 策定背景 | 東日本大震災(2011年)を受け、学校における安全管理体制の整備が急務とされた。 | 第1次計画の成果と課題を踏まえ、重大事故の防止と危機管理対応の強化を求める声が高まった。 | 第2次計画の取組の定着度に差があり、災害記憶の風化や地域間格差が課題に。 |
| 基本方針 | 「未然防止」「危機対応」「安全教育」の三本柱。 | 学校安全文化の定着とPDCAサイクルの導入を重視。 | 学校安全の実効性強化と地域連携の深化、データ活用による「見える化」。 |
| 重点施策 | ①危機管理マニュアル整備 ②防災教育充実 ③施設・設備安全点検 | ①安全教育の体系化 ②危機管理訓練の定期化 ③安全点検の標準化 | ①学校安全計画・マニュアル見直しサイクル構築 ②地域と連携した防災教育 ③データ活用と意識向上 |
| 特徴的な取組 | 安全主任の設置、防災訓練の全国的実施。 | 児童生徒参加型の安全教育、防災・防犯統合訓練。 | 子どもの視点を加えた安全対策、災害リスクに応じた訓練カスタマイズ。 |
| 成果 | 学校危機管理マニュアルの整備率向上(全国9割以上)。 | 防災教育の体系化進展、安全文化の概念が普及。 | 現在進行中、成果は中間評価で検証予定。 |
| 課題 | 実効性の確保、地域間格差。 | 実践の定着度の差、災害記憶の風化。 | 学校現場での継続的改善と地域との協働強化。 |
