ーーーー講義録始めーーーー
# 【第1回】雇用区分の多元化と雇用ポートフォリオ:雇用区分とは何か
はじめに
雇用区分の多元化と雇用ポートフォリオについての解説を始めたいと思います。この連載では、パートや契約社員など非正規社員といわゆる正社員に加えて、最近注目を集めている限定正社員など、多様な雇用区分とその組み合わせのマネジメント、つまり雇用ポートフォリオについて解説していきます。
雇用区分とは何か
雇用区分とは、人材を効率的・効果的に育成・確保・活用・処遇できるように、すべての従業員をいくつかのグループに分け、それぞれに異なる人事管理を適用する仕組みを指します。典型的には、非正規社員と正社員の区分のことです。
ただし、正社員と非正規社員といった呼称は、法律上定義されているわけではありません。実際、政府統計でも「正規/非正規」は、法律概念というより、主として**勤め先での呼称(呼び方)**を基礎に整理されています。
いわゆる正社員の要件
一般的には、いわゆる正社員は、次のような特徴を併せ持つことが多いと説明されます(ただし、現実には例外もあります)。
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無期雇用であることが多い:つまり期間の定めのない雇用契約である場合が多い
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フルタイム勤務であることが多い:つまり、勤め先の通常の労働者(一般労働者)と同程度の所定労働時間で働く場合が多い(所定労働時間は企業・職種により幅がある)
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基幹的に活用されることが多い:配置転換・職務の幅・育成の位置づけ等において、企業内の中核的な人材として運用される場合が多い
※ここでの「正社員」は、法律用語として厳密に定義されたものではなく、現実の運用を説明するための一般的整理です。政府統計では「正規の職員及び従業員」という呼称が用いられ、勤め先での呼称によって区分されます。
非正規社員の要件
一方、非正規社員は、実務的には「正社員以外」として語られることが多いのですが、実態としては多様です。整理の仕方には大きく2つあり、混同しないことが重要です。
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(A)統計上の整理:政府統計(労働力調査等)では、非正規は主として勤め先での呼称が「パート」「アルバイト」「(労働者派遣事業所の)派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」である者として整理されます。
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(B)制度・契約の観点からの整理(分析枠組み):非正規の多様性を理解するため、しばしば次のような軸で整理します。
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有期雇用:期間の定めのある雇用契約
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短時間勤務:所定労働時間が、勤め先の通常の労働者より短い働き方(具体的時間数は企業・職種により異なる)
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雇用と指揮命令の関係:雇用主(賃金支払・雇用契約の相手)と、日常の指揮命令を行う主体が一致するかどうか(例:労働者派遣では、雇用主は派遣元、指揮命令は派遣先)
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※ここでの(B)は「非正規の定義」ではなく、雇用形態を理解するための整理枠組みです。
非正規社員の分類
要するに、非正規社員といっても、その雇用形態は多様ですが、労働法や実務の観点からは、とりわけ**雇用(誰と雇用契約を結ぶか)と指揮命令(誰が日々の指揮命令を行うか)**の関係を区別して捉えることが重要です。
直接雇用の非正規社員は、パート、アルバイト、契約社員などに分けられます。
雇用と指揮命令が分離しうる形態として典型なのが派遣です。派遣労働者は派遣元と雇用契約を結び(雇用主は派遣元)、実際の業務上の指揮命令は派遣先が行う、という形をとります。
また、請負は、通常、発注元と労働者の間に雇用関係はなく、(適法な請負であれば)指揮命令は請負会社側が行います。ここは派遣と混同しやすい点です。
さらに、フリーランスは、多くの場合、雇用契約ではなく業務委託等で働くため、労働力調査の「雇用者(正規/非正規)」の枠組みとは基本的に別の区分になります。したがって「非正規社員」と同列に置く場合には、雇用者なのか自営的就業なのかを明確にしないと誤解を招きます。
ただし、こうした分類は厳密なものではありません。パートと呼ばれていてもフルタイムで働いている者もいるし、無期雇用の者もいます。
(図表)雇用形態を理解するための整理(概念図)
| 観点 | 直接雇用(雇用主=勤め先) | 雇用と指揮命令が分離しうる形態/外部化 |
|---|---|---|
| 雇用契約の有無 | あり(例:パート、アルバイト、契約社員、嘱託など) | あり:派遣(雇用主=派遣元、指揮命令=派遣先)/あり:請負(雇用主=請負会社、指揮命令=請負会社)/なし(または雇用契約ではない):フリーランス(業務委託等) |
| 契約期間 | 無期・有期いずれもありうる | 形態により異なる |
| 労働時間 | フルタイム・短時間いずれもありうる | 形態により異なる |
※この図表は、統計の区分をそのまま置き換えるものではなく、雇用形態の違いを理解するための整理です。統計上の区分は次節のとおり、主として呼称に基づきます。
政府統計における雇用形態の区分
したがって、政府の統計資料では、雇用形態は勤め先での呼称・呼び方によって識別されることとなります。
具体的には、以下の7つに区分されます。
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正規の職員及び従業員
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パート
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アルバイト
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派遣社員(労働者派遣事業所の派遣社員)
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契約社員
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嘱託
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その他
正規の職員及び従業員以外の6区分はまとめて「非正規の職員及び従業員」とされます。
総務省統計局の労働力調査(長期時系列)によれば、役員を除く雇用者に占める非正規の職員及び従業員の割合は、1990年で20.2%です。
その後、長期的に上昇し、近年は概ね4割前後の水準で推移していることが、公表資料から確認できます。
次回は、非正規社員がどのような経緯を経て増加していったのか、1990年代から現在に至る動きを振り返ります。
